菊地勝吾の日記

シドニーに住んでいます。ドイツのIT企業に勤務。ラグビーが大好きです。

ラグビー豪州代表、ワラビーの新監督に元アイルランド代表監督のジョー・シュミット氏が就任へ

ラグビーオーストラリア(RA)は、ニュージーランド生まれで、アイルランド代表監督の経験もあるジョー・シュミット氏が豪州代表ワラビーズの新監督に就任すると1月19日に発表した。
 

The new Wallabies' head coach, Mr Joe Schmidt Photo : Wikipedia
以下はRAの発表資料から。日本語は機械翻訳を若干修正。英文は原文のまま。
シュミット氏は3月から2年間の契約を結び、2025年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ遠征終了まで指揮を執る。
58歳のシュミット氏は、アイルランド代表コーチとして3度のシックス・ネーションズ(6カ国対抗戦)優勝、オールブラックスと南アフリカ代表への歴史的勝利など、輝かしい実績を残している。
2018年ワールドラグビー年間最優秀コーチを獲得し、2019年にアイルランドを世界ランキング1位に導いた後、アシスタントコーチとしてオールブラックスと契約した。それ以前には、アイルランドの強豪レンスターで2度の欧州選手権を制し、チャレンジカップとプロ14のタイトルも獲得している。
ワラビーズが史上初めてワールドカップのノックアウトステージ進出を逃した後、シュミット氏はエディー・ジョーンズ氏の後任として、自分の前に立ちはだかる課題を認識していた。
「私は、ワラビーズが困難な時期を乗り越えてきたことを自覚しており、RAとの連携を深め、明確な方向性を示しながら、ワラビーズが前進する道を築く手助けをしたいと強く思っています。来年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズツアーまでのプログラムには、多くのチャンスとチャレンジがあり、選手やスタッフを活気づけることでしょう。スーパーラグビーのコーチ陣やRAのスタッフと交流し、これから数カ月間、選手を観察し、会うことを楽しみにしています」などと、シュミットは声明で述べた。
RAのピーター・ホーン次期ハイパフォーマンスディレクターは、シュミット氏を監督に任命する「満場一致」の決定の場に出席し、彼がワラビーズに成功をもたらすと確信している」
「ダン・ハーバート、フィル・ウォー、ジョー・ロフ、ジョン・イールズ、デビッド・ヌシフォラ、RAのピープル&カルチャー部門長、そして私を含む委員会によって決定は行われました。ジョーを起用することは満場一致の決定だった。パネルの誰もが、彼の態度、ゲームに対する冷静で論理的なアプローチ、そしてコミュニケーション・スタイルに感銘を受けた。ジョーは、そのキャリアを通じて、強い文化とワールドクラスの選手を育てながら、構造改革においてリーダーシップを発揮する能力を示してきた。ワールドラグビーでジョーと仕事をした個人的な経験から、彼は今のワラビーズとオーストラリアラグビーにとって理想的な人物であり、スーパーラグビーの各クラブとの連携を強化し、パフォーマンスを最大化するために彼と緊密に協力することを楽しみにしている」とホーン氏は述べた。
さらにホーン氏は「ジョーは、レンスターで欧州タイトルを獲得し、シックス・ネーションズで優勝し、アイルランドを初めて世界一に導き、最近ではオールブラックスのラグビーワールドカップ決勝進出を支えた 」ともしている。
RAのフィル・ウォーCEOは「彼はまた、2018年にシックス・ネーションズのグランドスラムを制した後、ワールド・コーチ・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。私たちがオーストラリアで統一したラグビーシステムを構築することを明言していることを考えると、ジョーは世界で最もラグビーに忠実な2つの国であるアイルランドとニュージーランドで経験を得ている。これは、私たちが前進する上で間違いなく貴重なものとなるでしょう。彼は、北半球と南半球の両方での経験から、ラグビーをグローバルな視点で見ており、彼の就任により、2025年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズツアーに向けて、私たちは強い立場に立つことができます。」などと、付け加えた。
 
Rugby AU
Rugby Australia has confirmed Joe Schmidt has been appointed as Wallabies coach.
Schmidt signs a two-year deal starting in March, committing to the side until the end of the British and Irish Lions tour in 2025.
The 58-year-old is renowned for his success with Ireland, winning three Six Nations titles along with historic wins over the All Blacks and South Africa.
The 2018 World Rugby Coach of the Year led Ireland to the world number one ranking in 2019 before linking up with the All Blacks as an assistant coach.
Prior to this, he won two European Championships with Irish powerhouse Leinster along to go with the Challenge Cup and Pro 14 title.
Schmidt recognised the challenge ahead of him, replacing Eddie Jones after the Wallabies missed the World Cup knockout stages for the first time in history.
“I am conscious that the Wallabies have weathered a difficult period, and I am keen to help them build a way forward, with greater alignment and clear direction from RA,” he said in a statement.
“The upcoming Test matches against Wales will arrive quickly, post-Super Rugby, and the program through to the British and Irish Lions Tour next year presents plenty of opportunities and challenges – which I am sure will invigorate players and staff.
“I am looking forward to connecting with Super Rugby coaches, RA staff, and getting to observe and meet players in the coming months.”
RA incoming director of high-performance Peter Horne oversaw the ‘unanimous’ decision to appoint Schmidt, confident he can deliver success for the Wallabies.
“It has been a thorough process to make sure that we have landed the best and most suitable candidate – conducted by a panel including Dan Herbert and Phil Waugh, Joe Roff, John Eales, David Nucifora, RA’s head of people and culture and myself,” he said.
“It was a unanimous decision to appoint Joe – everyone on the panel was impressed by his demeanour, his calm and logical approach to the game, as well as his communication style.
“Throughout his career, Joe has demonstrated an ability to take a leadership role in structural reform while developing a strong culture and world-class players.
“From my personal experience working with Joe at World Rugby, he is an ideal fit for the Wallabies and Australian Rugby at this time, and I am looking forward to working closely with him on developing a stronger alignment with our Super Rugby clubs to maximise our performances."
“Joe has delivered success at every stop in his career – winning European titles with Leinster, winning Six Nations championships, leading Ireland to World Number One for the first time and, most recently, his role in the All Blacks’ run to the Rugby World Cup Final,” RA CEO Phil Waugh added.
“He has also been a World Coach of the Year after he won the Six Nations Grand Slam in 2018.
“Given our stated plan to build a unified Australian Rugby system, Joe’s experience with Ireland and New Zealand – two of the most aligned Rugby nations in the world – will no doubt prove valuable as we move forward.
“He has a global view of the game from his experience in both the Northern and Southern hemispheres, and his appointment puts us in a strong position as we build towards the 2025 British and Irish Lions Tour.”

言語対立は民族の闘争 ー 母語を奪われた華人系インドネシア人の歴史から学ぶ

 近所の大手スーパーマーケットには、華人系インドネシア人がたくさん働いている。華人系の同僚どうしの会話はインドネシア語ばかりだ。その他の同僚やお客との会話は流暢に英語を話しているので、職場や仕事上でのコミュニケーションにはまったく問題がないようだ。彼らは華人系だが中国語はまったく理解できないそうだ。こうした華人系インドネシア人の多くは、1998年5月にインドネシア各地で起きた「反華人暴動」の後に、オーストラリアに移住してきた家族たちだ。

北京の故宮 華人・華僑を世界中に送り出した中国。写真は筆者

 この暴動の後、当時のスハルト政権は崩壊し、中国の影響を排除するために文化や教育などで実施されてきた華人差別の法律は廃止された。それまで華人は、漢字の使用はもとより華人教育も禁止されてきた経緯がある。このため華人系インドネシア人の多くは先祖・民族の言語である中国語(*先祖は中国南東部の福建省からインドネシアに移住した家族が多いため福建方言。華人の人口が最も多いのはインドネシア)を学ぶ機会がなかった。民族集団として母語を奪われた歴史を持つ人たちである。

写真は北京の市内。筆者撮影

 この華人系インドネシア人たちと買い物のときに接すると、中国語を話すその他の華人や中国系の人たちとの明らかな違いを感じてしまう。あくまで筆者の個人的印象であるが、華人系インドネシア人は人当たりがよくソフトな接客対応がうまくできている。この違いはチャイナタウンにあるスーパーマーケットで買い物をすると何となく理解できる。チャイナタウンのスーパーマーケットの華人・中国系の店員はおおむね無愛想(*ごめんなさい!でも本当)であり、接客態度としてはあまりいい印象を持てない。

 華人系インドネシア人はまるで別の文化をもつ華人の民族集団のように思えてしまう。

 民族のアイデンティティである母語。これを他者から意図的に奪われてしまったときに起きる独自文化の変容の姿や、母語を守るために民族がいかに努力しあるいは「戦ってきた」かを、華人系インドネシア人たちの会話を見聞きするたびに考えさせらる。

 

言語の対立は言語をめぐる「闘争」

 

 NHKラジオ・フランス語講座応用編の12課で「ベルギーの言語対立について」の話があった。日本語の題名は「言語対立」となっているが、フランス語での題名は「La guerre des langues en Belgique」と戦争(la guerre) という単語があてられていた。la guerre には対立という意味もあるのかどうかを、念のために辞書で調べてみたのだが、戦争か紛争という日本語はでていたが、対立という意味はでていない。つまり言語を巡る対立や争いは、真の意味では、戦争状態に近い闘争なのかと、この題名によって気付かされ、正直驚いてしまった。

 この驚きは、次の13課で学んだ「スイスの言語事情について」ででてきたスイスの言語事情に関する比較で納得ができた。以下は同講座テキストの日本語訳より。

 

質問:ベルギーとは違って、スイスではどうして言語共同体の間に緊張関係があまりないのでしょうか?

回答:簡潔にいうと、スイスは、13世紀から14世紀にかけて、いくつかの自由な共同体が自発的に結びついてできた国で、険しい山に囲まれ、天然資源にも乏しく、海にも面していません。一方でベルギーはスイスよりもずっと近年につくられた国で、ヨーロッパの列強による妥協としてつくられた国だからではないでしょうか。

 

 なるほど。簡単な説明だが、確かに18世紀から20世紀にかけてずっと続いたヨーロッパでの戦争のたびに、現在のベルギーのフランス語地域とオランダ語地域の力関係が変化して政治・経済情勢が変動している。しかも第二次世界大戦後の国境線変更によって、ドイツ語話者の地域がベルギー国内に編入され、ドイツ語が公用語とされるドイツ語共同体が国内にできている。

 その上、ベルギーの首都ブリュッセルが今日、EU(欧州連合)の主要機関が置かれて「EUの首都」と呼ばれているのは、大国のフランスとドイツの中間に位置し、両大国のプライドと意地のかけひきの妥協の産物として、真ん中にあるベルギーが選ばれたから、という単純明快な理由を知ってしまった。

日本外務省のサイト情報より Map Source : Ministry of Foreign Affaires of Japan

 ところで、言語の対立あるいは言語をめぐる闘争という観点からすると、オーストラリアではそうした摩擦が、表面的であれ深層的であれ、存在しない。ヨーロッパや東南アジアなどに多く見られる言語と政治を巡る争いが幸いなことに存在しないのである。世界中から移住者や難民を受け入れて多文化国家としての国是を掲げ、複雑な民族・人種構成が国内社会にあるにもかかわらず、言語対立がないというのは極めて恵まれた例と言えるのではないか。

 この点では、同じく多文化主義を掲げて移住者を受け入れている国家、カナダとは事情がかなり異なる。カナダでは歴史的な経緯に由来する英語とフランス語の言語対立と政治闘争が根深く存在するからだ。

 オーストラリアに言語対立のない理由は簡単である。公用語の英語が絶対的な位置を占めて国民のコミュニケーション言語として完全に機能している一方で、200種を超える諸言語は政治的にも社会的にも抑圧・差別されることはなく、むしろ同じ言語グループのコミュニティー内部での言語学習や使用が奨励されているからだ。中国語やフランス語、イタリア語などいくつかの言語は学校教育の中で第2外国語として履修されているし、大学入学資格試験でもテスト科目のひとつとして採用されている。

 公共サービスにおいては、英語以外の諸言語でのサービスも容易に受けることができる。以下のチラシは、連邦政府の健康・保健省が発行しているものだ。詳しい情報を自分の母語で読みたい場合は、連邦政府サイトを見れば掲載していますとの内容である。ここで案内をされているのは22言語だけだが、日本語を含め、実際はもっと多くの言語でもサービスを受けることが可能だ。

Source : Australian Government - Deparment of Health

 様々な言語を話す民族集団が存在しているにもかかわらず、英語をコアの共通言語とすることで言語対立が発生しないオーストラリアは非常にラッキーな国だ。ただ、この特殊な成功例を他国にそのまま持ち込んでも、うまく機能するとは思えない。オーストラリアが成功した理由のひとつは、コアの言語が英語だったからだ。

 コミュニケーション言語として英語は、世界ですでに圧倒的なシェアを持っており、今後もその重要性が増す一方だ。EUの首都とまで呼ばれても言語対立のあるベルギーでは、英語が将来「共通語になるかもしれない」(上記講座12課、講師のグラヅィアニ氏の説明より)とさえ言われている。

 ドイツ、フランスなどヨーロッパでは外国人労働者や移民が増加している。ドイツではこうした外国人に向けたサービスとして、ドイツ語の学習を支援、奨励する取り組みが行われているそうだ。しかし、ドイツ語はあくまで国民言語であり、国際的なコミュニケーション言語ではまったくない。

 その上、ドイツ語は文法が緻密で英語に比べると初心者には習得が難しいとまでされている。ドイツ語を学ぶことで、外国人がドイツの文化と社会を理解し、社会的な融合が進むという大きなメリットはあるはずだが、実際はどういう状況なのだろうか。ちなみに、筆者が勤務する会社はベルリンに本社があり、ドイツ人以外の外国人(トルコ人、ブルガリア人、ポーランド人、フランス人)もたくさん働いているのだが、ベルリン本社の社内外での会話はすべて英語だ。

 ドイツ語に比べると、国際言語としての地位を依然維持しているフランス語の場合もほぼ同様であると思える。フランス政府が国民言語としてのフランス語を保持・発展させ、学習を奨励しようとすると、フランス国内にいる外国人からは真逆の反応、つまり「英語への逃避」現象がでてしまうのではないかと考えてしまう。実際、フランス国内にいる不法移民が生命の危険をおかしてでもドーバー海峡をわたり、イギリスに行こうすると背景のひとつには、この言語問題(*英語が通じるイギリスなら仕事も得やすい)があると言われている。

 日本では国民言語としての日本語がある。公用語であるとは法令で規定されていないが、事実上、唯一の公用語である。国内で不足している労働力を補うため、分野を限定しながら外国人労働者を受け入れるようになったため、外国人の多い地域によっては多文化社会が発展してきている。外国人労働者を受け入れる際、日本語能力を事前に審査し人材を選抜しているのは、事実上の公用語である日本語を使ってコミュニケーションができるかどうかが大きなポイントになるからだろう。

 ただ、日本語の能力を基準とする人材選抜方法が今後もずっと維持されるかどうかは極めて疑問だ。ITなどの産業分野によっては日本語よりも英語の能力の方がはるかに有用だからである。また、日本人が外国人とコミュニケーションをする際にも、ほとんどの場合、英語がベースになる。

 産業・経済社会の変化に伴う労働力の国際移動とその時代的な要請に応じて、日本が将来、公用語として日本語と英語を法的に明記する時がやってくるかもしれない。その際には、世界的に稀な成功例であるオーストラリアの言語政策を参考にしたりはするだろうが、コアの言語が異なるため、そのまま適用はすることは不可能だ。さらに、英語に対して言語対立をしてきたフランス語も参考にはなるが、フランスの言語政策は適用除外とされるだろう。

 これに対してドイツの例は大いに参考になるはずだ。言語としての難易度は別にして、ドイツで現在進展している多文化的な社会変化は日本の状況とだんだん似通ってきたように思える。しかも、コアとなる国民の民族意識の強さと誇り、それぞれの母語に対する愛着と義務感に関して、日本人とドイツ人は非常に近いものがある。

 言語対立という話題を通して、未来の社会の一端が自分には見えてきた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7人制ラグビー 豪州女子が圧倒的に強い!NZを撃破して第一ラウンド優勝                              強さの要因を考えてみた

ラグビー7人制(セブンズ˚)の世界ツアー第1ラウンド、HSBC SVNS 2024 ドバイ大会が12月2日と3日に開催された。1日目の試合をテレビ観戦して驚いたのは、オーストラリア女子の際立った強さだ。宿敵のニュージーランドを決勝で破り第1ラウンドを優勝で飾った。2016年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したオーストラリア女子は、来年のパリ五輪でも金メダルを獲得できるだけのパワーとスピード、そしてスキルの高さを大会初日で示した。豪州女子のセブンズが圧倒的な強さを発揮している秘訣は一体何だろうか。

ラグビーセブンス世界ツアーの第一ラウンド ドバイ大会 Photo : World Rugby

第一ラウンドの優勝カップを手にした豪州女子 Photo : World Rugby

豪州代表の1日目プールBの試合結果は女子が3戦全勝。しかも、ブラジルと日本には得点を許さず大差をつけた。アイルランドには1トライを許したものの、28ポイントもの点差だ。一方の男子は1勝2敗で、女子とのパファーマンス結果に大きな開きが出た。

決勝トーナメントで豪州女子は米国に32-5 で勝ち、順当に準決勝に進んだ。準決勝では強豪のフランスを21-14で破った。決勝は因縁の強敵と言えるニュージーランドを相手に競り勝ち、26-19  で優勝した。

豪州女子はプールBで3戦全勝 圧倒的な強さを示した Photo 7 & Image : Rugby Australia

一方、男子は決勝トーナメントには進んだものの、準決勝で南アフリカに敗退し8強どまりだった。ちなみに、男子は15人制で最新の世界ランキングが9位とトップグループの5カ国から引き離されて低迷中だ。7人制でも金メダル候補の女子ほど注目されていないのが現状と言える。

男子は15人制で豪州代表のキャプテンをしてきたマイケル・フーパー選手が今年から7人制に転じてパリ五輪を目指すので、これから注目されることになると見られる。だが、彼が実際に出場するのは来年1月末の第3ラウンドのパース大会から。スター選手の登場によって男子の7人制が盛り上がるまでには、まだ少し時間がかかる。

7人制ラグビーで豪州女子はどうしてこんなに強いのか。

代表選手たちはオーストラリア女性の平均身長とされる165cm より少し高い人がほとんどだが、目立って高身長というわけではない。キャプテンのシャーロット・キャスリック(Charlotte Caslick)の場合は170.2cm 。日本人男性の平均身長が171.5cm とされているから、東京の街中を歩いていてもそんなに目立たないはずだ。

豪州代表チームがトレーニングをしている様子は以下のビデオ(2023年1月に筆者が撮影)で見れる。キャスリック選手などを含めて身長的にはオーストラリアでごく標準的な女性ばかりだ。

しかし、全員の体躯がすごい。彼女たちを近くで見ると上半身から下半身まで筋肉量の多さが目立つ。子供の頃からよく食べ、様々なスポーツを通して、非常によく運動してきたであろう彼女たちの身体成長の歴史を物語っている。とにかくガタイがすごいの一言。柔道やレスリングなどの格闘技もしてきたのかと思うほど、がっちりしているのである。

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日本は柔道やレスリングが世界トップレベルにあるので、スポーツとして非常によく組織化されて盛んだが、オーストラリアでは柔道やレスリングは非常にマイナーなスポーツだ。したがって、彼女たちの多くは格闘技系のスポーツではなく、他のボール系スポーツやジムでのウエイトトレーニングでこれだけ優れた体格に成長してきたはずだ。

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しかも彼女たちは足が速い。代表選手のひとりで、今回のドバイ大会でデビューし、初トライをあげたケイトリン・シェーブ(Keitlin Shave)選手の場合、高校時代は100M、200Mなどの短距離のスプリンターで、世界陸上競技連盟の公式ランキングが記録として残っている陸上選手だった。

https://worldathletics.org/athletes/australia/kaitlin-shave-14670278

ケイトリン・シェーブ選手 ドバイ大会でデビューし初トライ Photo : Rugby AU

陸上選手からラグビー界に転身する例は、多いのか少ないのかは手元に数字がないので分からないが、ラグビー以外の競技から7人制ないしは15人制にスポーツ転身して活躍している選手はかなり多いはずだ。

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豪州女子の7人制代表選手たちを見ていて感じるのは「高度に鍛錬された身体能力を持ち格闘技ができるような強い体格を持った上に、陸上選手のようなスピードをもった女性たちがラグビーをプレーしている」である。

代表選手たちが筋力トレーニングを行う施設や設備は非常に恵まれている。豪州ラグビー協会があるシドニーの本部ビルには、選抜されたエリート選手向けに特別のジムがある。ここでは豪州代表だけではなく、州代表に選ばれた7人制の女子選手たちが定期的にトレーニングを行っており、専任のコーチが指導にあたっている。国代表、州代表をとわず、選手の育成活動が集中的に統合されているのである。

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豪州代表チームの施設でジムトレーニングに励むNSW州代表の女子セブンズチーム

豪州女子7人制ラグビーが今、世界のトップに立っている成功の秘訣を自分なりにまとめてみると、以下の5点を挙げることができる。

 

1.  学校スポーツとしてではなく、クラブスポーツをベースに選手が育成されてきた

2. 選手育成のシステムが長期的に一体・統合化され、地域・州・国ベースで運営を簡素化

3. 他のスポーツを経験した有力選手も柔軟に採用。縦割り組織でなく水平・流動型

4. 15人制に比べると、7人制は他の競技コードとの選手獲得競争が弱い

5. 五輪競技のひとつとして、7人制女子はエリート選手への補助や支援が手厚い

 

第4盲目の他の競技コードとは、15人制のラグビーユニオンよりも商業的に成功して豪州東部で人気が高い13人制のラグビーリーグ(NRL)のほか、豪州全国で人気が高いオージールールズフットボール(AFL)が相当する。NRLとAFLも女子のリーグ戦がこの2、3年で活発になっており、試合中継や大衆紙での報道、テレビショーなどを通じて商業的にも成功してきた。女子選手の獲得競争は、中学・高校生の段階から激しくなってきた。

豪州女子7人制ラグビーをこれから来年のパリ五輪まで追っていきながら、スポーツ選手育成のあるべき姿を自分なりに考え、自分のアマチュア・コーチ活動に活かしていきたい。

ラグビーのルール変更 タックルの高さを引き下げ             来年2月10日から適用

ラグビーのルール変更 ー タックルの高さを引き下げ
来年2月10日から適用

ラグビーワールドカップ2023フランス大会の決勝戦でニュージーランド・オールブラックスの主将、サム・ケイン選手がハイタックルでレッドカード一時退場になった後、映像判定でレッドカード相当と判断されて試合退場となり、オールブラックスが優勝を逃したとされるハイタックル問題。ラグビーの統括組織であるワールドラグビーがハイタックルの規定をさらに厳格し、ルールに合致するタックルの位置をさらに下げる新規則を来年2月から、プロ、アマチュア、ジュニアを問わず、ラグビーの全試合で適用すると、豪州ラグビー協会が12月1日発表した。

Copy Right - Getty Images: Michael Steele/World Rugby

発表内容はラグビーのレフリーと競技運営者向けにオープンレター(公開書簡)という形で公表された。日本語訳は以下の通り。

コミュニティラグビーのマッチオフィシャルへの公開書簡

 

おはようございます、

 

今年3月、ラグビーオーストラリアは、ワールドラグビーが推進する2年間の世界的なルールのトライアルに参加することを約束しました。その結果、コミュニティレベルでは、ルールに合致するタックルの高さが肩のラインより下から胸骨のラインまで引き下げられることになりました。

 

新規則 - 9.13

プレーヤーは、相手側プレーヤーに対して、早いタックル、遅いタックル、 危険なタックルをしてはならない。危険なタックルとは 、たとえタックルが胸骨のラインより下で始ま ったとしても 、胸骨のラインより上で相手側プレーヤーをタックルすること 、ま たはタックルしようとすることを含むが 、これに限定されない 。

 

胸骨の付け根より上方で始まり、胸骨の付け根より上方で終わる接触は、ペナルティの対象と なることがある(例えばペナルティ、反則を繰り返す場合はさらなる制裁)。

 

胸骨の付け根より上で始まり、ボールキャリアーの頭部への接触で終わる接触は、ワールドラグビー競技規則のガイドラインおよび頭部への接触プロセスに基づく制裁の対象となる。

 

加盟ユニオン、コーチ、マッチオフィシャル、アドミニストレーター、医療専門家との協議の結果、2024年2月10日以降に開始されるスーパーラグビー以下のすべての大会において、タックルの高さは胸骨の付け根より下に引き下げられる。この法改正には、すべてのプレミアグレード、学校対抗戦、およびジュニア競技が含まれる。

 

すべての利害関係者の関与において、重要な考慮がなされた:

- 選手の安全性の向上

- プロプレーヤーを含むプレーヤーの経験。

- マッチオフィシャルが遭遇する可能性のある新たな課題。

- 現在指導されている戦術やタックルテクニックの変更の可能性。

- 現在ラグビーに携わっていない人々による、ラグビーに対する認識。

法律で認められているタックルの高さを胸骨の付け根に変更することで、ボールキャリアーの体に対してタックラーの頭が低くなり、頭から頭、頭から肩への接触のリスクを最小限に抑え、両方のプレーヤーが頭部を負傷するリスクを減らすことができる。

 

過去6年間の初期試験と研究結果によると、タックラーの頭部がボールを持ったプレーヤーの胸骨より上に位置する場合、脳震盪のリスクが4.2倍高くなり、タックルする最も安全な場所は腰と胸骨の間である。

 

新しいタックルの高さへの移行をサポートするため、ラグビー界にリソースとトレーニング資料が提供される。これらの資料は、様々な年齢層における制裁の枠組み、解釈、およびフィールドでの実施について明確にするものである。例えば、以下のようなものがある:

 

- コーチ教育とゲームマネジメントガイドラインの対面セッション

- ラグビーラーニングセンターのスマートタックルeラーニングコースは、すべてのコーチとレフリーに、法律のバリエーションとその適用方法についてより深く理解してもらうことを目的としている。

- ゲームマネジメントガイドラインのプレゼンテーションは、大会および協会レベルで行われる。

調査の一環として、世界各地の大会の映像が撮影され、ワールドラグビーによって分析され、従来のルールの下での重大な頭部への衝撃と脳震盪の比較、および毎年の変化の追跡調査が行われる。

 

この評価では、タックラーとボール保持者の位置関係、頭部の近接、接触点、タックルの種類、プレーヤーの方向、回避技術、タックルに先立つパスの数などを検証する。ボールインプレーの時間、パス率、オフロードなどのゲーム指標も、試行評価の一環として把握される。

 

選手やマッチオフィシャルにとって調整期間が必要であることは認識しているので、この間は忍耐強くお待ちいただきたい。より詳細な情報と継続的なアップデートについては、私たちのウェブサイトをご覧ください。

 

皆様のご支援とラグビーへの多大なる貢献に感謝いたします。

 

よろしくお願いいたします、

 

フィル・ウォー - ラグビーオーストラリア最高経営責任者

 

DeepL.com(無料版)で翻訳しました。

 

英語の原文は以下の通り

 

Open Letter to all Community Rugby Match Officials 

 

Good morning,

In March this year Rugby Australia committed to participate in a two-year global law trial, facilitated by World Rugby, which will result in the legal tackle height being reduced from below the line of the shoulders to the sternum at Community level.

New law - 9.13
A player must not tackle an opponent early, late or dangerous. Dangerous tackling includes, but is not limited to, tackling or attempting to tackle an opponent above the line of the sternum even if the tackle starts below the line of the sternum.  

Contact which starts and ends above the base of the sternum may be liable to sanction (e.g., penalty, with further sanctions for repeated infringements).

Contact which starts above the base of the sternum and ends with contact to the ball carrier's head will be liable for sanction under World Rugby law guidelines and head contact process.

Following consultation with our Member Unions as well as coaches, match officials, administrators and medical professionals, the tackle height will be lowered to below the base of the sternum for all competitions below Super Rugby that commence on or after February 10, 2024. This change in law will include all Premier Grades, School Competitions, and Pathway Competitions.

In all stakeholder engagement, key consideration was given to:

  • enhancing player safety.
  • the experience for the players, including professional players.
  • additional challenges that could be encountered by match officials.
  • possible changes to tactics and tackle technique currently being coached.
  • perception of the game by people not currently involved in rugby.

Changing the legal tackle height to the base of the sternum ensures the tackler's head is lower relative to the ball carrier's body, minimising the risk of head-to-head, and head-to-shoulder contact, and reducing the risk of head injury to both players. Initial trials and research findings over the last six years have indicated that the risk of concussion is 4.2 times higher when a tackler's head is positioned above the sternum of the ball carrier and the safest place to tackle is between the waist and sternum.

Resources and training materials will be made available to the rugby community to support their transition to the new tackle height. These resources will provide clarity on sanctioning frameworks, interpretations and on-field delivery at varying age groups. Some examples of these include:

·     Face to face Coach Education and Game Management Guidelines sessions. 

·     Smart Tackle eLearning course in the Rugby Learning Centre which has been designed to provide all coaches and referees with a more in depth understanding of the law variation, and how it can be applied. 

·     Game Management Guidelines presentations deliver at competition and association level. 

As part of the research select competitions around the world are being filmed and then analysed by World Rugby to undertake a comparison between significant head impacts and concussion under the previous law and the variation, as well as tracking the variation year to year. This assessment will review the positioning of tackler and ball carrier, their head proximity, point of contact, tackle type, direction of players, evasion techniques, number of passes preceding tackle etc. Game metric outcomes such as ball in play time, passing rate and offloads will also be captured as part of the trial evaluation.

We recognise there is likely to be an adjustment period for players and match officials so please be patient through this time. For more information and ongoing updates, please visit our website.

Thank you for your support and significant contribution to Rugby.

Kind regards, 

Phil Waugh - CEO, Rugby Australia

フランス語のNHKラジオ講座を久しぶりに聞き始めた 多文化の理解促進につながると信じて

久しぶりにNHKラジオの語学講座でフランス語の番組を10月から聞き始めた。週に2回、応用編で自分の興味を惹く内容の講座が始まったからだ。テーマは「フランコフォニーとは何か」で、フランス語話者の世界組織のことから始まって、第5回目からはフランス語史の話が始まった。自分にとっては、実に面白い内容だ。

フランス語は大学時代の第2外国語として単位履修しただけでなく、3、4回生でも上級単位の学習を続け、卒業後も学習を継続した経験がある。夢は結局叶わなかったもののフランス留学を希望していたので、フランス語に関して自分は初心者ではない。

 

ただし、今は英語国のオーストラリアに住んでおり、日常生活は日本語か英語、仕事や社交・スポーツ活動では英語のみを使っているので、フランス語が役立つとか使うなどの機会はまったくゼロである。

 

筆者が住んでいる地域はシドニーの中心部に近く古い街並みの町なので、フランスやベルギーなどのフランス語圏出身の人がかなり多いらしいのだが、近所の社交場であるパブの飲み友達の中にフランス語の話者は皆無。そもそもフランス語の話者がパブでビールを飲みながら、不特定多数の人たちと社交しているという場面に出くわしたこともない。

だから、「なぜフランス語を勉強したの?」とか「フランス語って何か役にたつの?」などと聞かれたことが何度かある。しかも、パブの客の中に多いイングランド人の場合は、フランスやフランス語を嫌悪する「嫌フランス派」がけっこう多いので、会話では注意がちょっと必要だ。

 

フランスに留学した経験があるというイングランド人(*注)が飲み友達の中にいるのだが、フランス語を使った軽い会話の後に英語で話している時に「俺はフランス語をフランスに留学して勉強したのでよく分かるけど、フランス人はイングランド人が嫌いだよ。イングランド人もフランス人が大嫌いだ」と言われた。この感情的な対立には、英仏間の歴史が絡んでいるので、当事者でない自分が入って議論をしても不毛だ。

(*注:連合王国=UKのブリティッシュ人をイングランドのポルトガル語読みの日本訛りに由来するイギリス人・英国人と呼ぶのは日本だけらしい。UKは王国連合だから、ブリテン島とアイルランド島北部の出身地域に応じて、それぞれイングランド人、スコットランド人、ウエールズ人、北アイルランド人と呼ばないと、相手に不快な顔をされる)

 

では、なんでまだフランス語をしつこく学んでいるのか?自問することは以前から何度も何度もあったのだが、これといった確たる結論は自分で出せていない。ひとつだけ言えることは、世界や自分の周りの社会が、母語の日本語と英語だけを使っている状態よりも、フランス語を知っていると、さらによく見える気がするのだ。

 

NHKラジオ まいにちフランス語2023年10月号の表紙

応用編の講師は、京都大学大学院・人間環境学研究科教授の西山教行さんと、京都大学国際高等教育院特定講師のジャン=フランソワ・グラヅィアニさんの2人だ。西山さんはフランス語教育に関して積極的に発言しており、日本フランス語教育学会の会長も務めている。

 

西山さんとグラヅイアニさん NHKテキストより

番組の第7回で次のような話題が出た。

西山さん「フランス語は現在でも普遍的言語なのでしょうか?」

グラヅィアニさん「まず、この『普遍的言語』という考え方は相対的に考える必要があります。というのもフランス語はその絶頂期にあっても、ヨーロッパのエリート層や外交官の言語でしたので、限られた人々だけが使う言語だったわけです。現在ではもちろん重要なコミュニケーション語は英語であり、フランス語はEUや国連といった組織を含めても、英語のはるか後ろにあるわけです。とはいえ、フランス語は5大陸で話されていますし、またアフリカ諸国の力が上昇すれば、世界の中でフランス語の地位はさらに強化されるかもしれません。」

 

アフリカ諸国の力が云々以降の説明に関しては、かなり疑問に思った。フランスがかつて植民地支配し、最近までフランス軍が駐留して現地の政権を支援していたアフリカ中部・西部のガボンやニジェール、ブルキナファソなどの国々では最近、軍事クーデターが次々と発生して、フランス軍が撤退したりなどの政情不安が続いている。この政治空白を狙ってロシアが進出している。

 

現地では反フランス感情が高まり、西部のセネガルではフランス企業が攻撃される事件も起きた。フランスがアフリカ諸国に対する新植民地主義的な政策を今でもとり、搾取し続けていると現地での反発が強まる中で、アフリカのコミュニケーション言語としてこれまで優勢だったフランス語は、果たして今後もその地位を保ち続けられるだろうか?極めて懐疑的に思わざるをえない。

(*現地の政治情勢とフランスとの関係に関しては、以下のCNNの記事が参考になる)

www.cnn.co.jp

話を自分のことに戻そう。

 

フランス語は動詞の規則活用・不規則活用があり、英語に比べるとずっと複雑だ。しかも名詞には男性と女性の区別があり、冠詞とセットでその区別をいちいち覚える必要がある。英語は名詞の性別がなく記憶作業が簡単にすむのだが、それはヨーロッパの諸言語の中では少数派。

 

こうしたことから、外国語として学習しやすいか難しいかの選択肢で問われれば、英語はフランス語よりはるかに学習がしやすいと思う。英語がコミュニケーション言語として世界中に拡大した理由は、大英帝国がかつて世界に広がり、現在は米国が世界中で政治的にも軍事的にも力を持っているからだけではない。要はコミュニケーションのツールとして受け入れられやすい言語だからではないか。

 

不思議なことに、フランス語を学習した後では、日常の「実用言語」である英語の学習がより楽になる。フランス語の学習を通じて得られた知識と運用能力が基盤にあると、英語ははるかに楽だと感じられて、英語という言語ツールを使ったコミュニケーションがスムーズになるのである。

 

言語学や脳科学の素人の自分には、例え話として適当かどうかは分からないが、フランス語は算数のドリルのようなものだと感じるのだ。やればやるほど、脳の活動が活発になって、英語を使っての会話や思考がより明晰になってくると感じる。英語が公用語のオーストラリアで、英語を日常的に高度に使いこなす必要がある今の自分にとっては、フランス語は不思議なほどコミュニケーションの基盤能力を与えてくれる存在だと思えてくる。

 

だから、フランス語の学習をこれからもしつこく続けようと思う。誰から何と言われようとも。

 

ところで、フランス語と同じインド・ヨーロッパ語族のロマンス諸語に屬するイタリア語は、文法だけでなく単語でもフランス語と類似・共通した項目が多い。フランス語の知識があると、イタリア語は非常に学習がしやすいのである。スペイン語の場合も同様だ。

 

もともとイタリア文化やイタリア料理が大好きなので、今、イタリア語にかなりはまっている。ちゃんと毎日勉強する時間を確保するような余裕は無いので、テレビやラジオでNHKの語学番組を聞き流す程度のレベルだが、楽しくて仕方ない。番組を見逃し・聞き逃したりすると悔しくなるほどだ。

 

イタリア系の住人が多い地域に住んでいるおかげで、イタリア語に接する機会は多く、近所のスーパーマーケットの加工肉・チーズの売り場では、客と店員がイタリア語だけでやりとりしている光景をよく見る。パブの飲み友達の中にもイタリアから移住してきた人が何人かいる。見ていても、聞いていても、話してもいても、とにかく楽しい。

 

料理や映画、スポーツなどが話題になると、彼らとは非常によく話が噛み合う。しかも、イタリア語も日本語も単語の語尾に母音が入り、母音をしっかり発音するので、英語で会話していてもお互いのアクセントを理解しやすく、話しやすい。お互いの文化を尊重し、相手の文化に興味を持ち合っているという意識と姿勢が、相互理解にとってのブースター(促進剤)になっているのだろうと思う。

 

イタリア語を本格的に学習できるような時間的な余裕がもしもあれば、おそらく短期間で自分は習得できるのではないか。それはフランス語の知識をある程度持っているからだ。なんせ、フランス語に比べると、イタリア語は「カジュアル」だ。人称ごとの動詞の活用があるから、主語を言わなくてもいいなど、厳密さが求められるフランス語の構文に比較して学習がかなり楽ではないかと感じる。しかも、名詞の性別はほぼ同じだから、これはすでに学習済み。発音もしやすい。

 

こうして考えてみると、学生時代から学んできたフランス語のおかげで、英語を実用的に使いこなせるようになったと感謝せざるをえない。さらに、英語以外の言語や文化にも対しても興味が尽きないのも、フランス語が言語能力の基盤をサポートしてくれていると思う。

 

オーストラリアは世界中からの移住者を受け入れている国なので、さまざまな言語・文化的な背景をもっている人たちが暮らす多民族・多文化の国家である。人と人とのコミュニケーションの中でさまざまな文化的な違いやその背景を、会話しているその場で即座に理解しなくてはならない社会的な環境が、この国には存在する。多文化社会に対する理解をひとりひとりの国民が強く持ち、それを社会の中で実践できないと、やがて分裂や対立を生み、この国は成り立たなくなるのだ。

 

フランス語はこの国ではまったく不用だし、使う機会すらもないーーーのだが、自分にとっては日本語に次ぐ言語能力の基盤だし、多文化社会でのコミュニケーションのブースターなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

豪州ラグビー界の改革がスタート NSWプロチームの運営や育成プログラムを中央集中化へ

会員メンバーになっているプロチームのワラターズを運営・統括するニューサウスウエールズ(NSW)州ラグビー協会から、今日、あらたまった文書が送付されてきた。豪州ラグビー界の改革を推進するために、これまで州別だった組織運営を、連邦組織である豪州ラグビー協会(Rugby Australia)に中央集中する形で統括される方向で同意に達したという。

 

ちょっと長い文章だったが、NSWラグビー協会の資産や知的財産などは維持し、全国レベルのラグビー育成プログラムを発動するらしい。ただ、現在も同じような選手・コーチの育成プログラムが実施されているから、これをさらに補強する形になるようだ。いずれにせよ、改革と成長に向けた取り組みが始まったことを評価したい。

写真はRugby Xplorer©Rugby Australia Ltd 2019-2022に掲載された発表資料から

以下は自動翻訳された日本語。その下に英語の原文を添付する。

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NSWラグビー、プロゲーム組織運営の中央集中化を支持 


親愛なるNSWワラターズファンの皆様、

最近、ラグビー・オーストラリアが提唱する、スーパーラグビーの5つのクラブが協力し合い、あらゆるレベルのラグビーの水準を向上させ、成功させることを目的とした「セントラル化」というコンセプトを耳にしたり、読んだりすることが多いと思います。

先日のラグビーワールドカップでのワラビーズの不振は、変革の必要性にいっそうの注目を集めました。

NSWラグビーとラグビーオーストラリア(RA)は、プロラグビーを提供するための完全に統合された新しいモデルに合意するために、何ヶ月も前から共同で取り組んできました。 これには、選手のための新しい契約モデルから、パスウェイや選手育成プログラムの改善までが含まれます。

このイニシアチブの原動力は、スーパーラグビーレベルの男女チームに長期的な成功をもたらし、代表チームの成功に貢献できる質の高い選手を輩出するという目標です。

ニューサウスウェールズ・ラグビーは、オーストラリアにおけるラグビーのこの新しいモデルを実現するために、主導的な役割を果たしています。私たちは、RAと協力し、団結し、集団で行動することで、ゲームのビジョンを作り、フィールドの内外でより良い結果をもたらす新しい構造を構築する戦略の一環として取り組んでいます。

私たちは、世界で最も競争の激しいスポーツ市場において、プロラグビーの現在の連盟モデルは持続不可能であると考え、NSWRUの理事会は、国全体でプロゲームの完全な統合を進めるという決定を支持しました。

NSWラグビーはまた、非常に現実的な財政的課題にも取り組んでいます。商業活動から得られる利益の減少に対して、プロラグビーにかかるコストが増加していることに加え、RAからの資金援助も減少しているため、ラグビーのために何が必要なのかに焦点を当て、明確な決断を下さなければなりません。 

RAとNSWラグビーによって任命された理事からなるNSWワラターズのための新しい理事会が設立され、この共同ガバナンスモデルがNSW州におけるプロラグビーの調整と結束をサポートします。RAはNSWワラターズのプログラムに100%出資します。

この新しいモデルは、ハイパフォーマンスなプログラムを調整し、フィールドの内外でプロラグビーの成果を向上させるための戦略やイニシアチブを実施することで、利益を最大化させます。新しいモデルでは、会員、スポンサー、スタジアムなど、地元の市場におけるワラターズの知識、専門知識、経験が、ナショナルプログラムをサポートするRAとの協力に不可欠であることを認識しています。

私たちは、この改革がNSWラグビー、NSWワラターズ、そしてオーストラリアのラグビーにとって最善の利益であると信じています。

そして、一部で言われているように、RAに権利のカギを渡すのではなく、共有ガバナンスとハイパフォーマンスモデル、そしてNSWラグビーがすべてのユニオンと協力的に働く意志が、誰もが求めているラグビーのポジティブな変化を推進する成功をもたらすと信じています。

統合されたアプローチは、地元での活動を可能にし、ニューサウスウェールズラグビーとワラターズの誇り高き歴史を維持します。2022年にオープンした2,000万ドルのハイパフォーマンスセンター「NSWラグビーHQ」や、NSWワラターズの商標、知的財産などの資産は、NSWラグビーの所有のまま維持されます。

NSWラグビーは、引き続きコミュニティゲームに全責任を負い、ゲームを成長させ、より多くの参加者を集め、進路を改善し、より多くの人々がラグビーに参加できる環境を作るためのプログラムを提供します。

コミュニティゲームを優先することで、ニューサウスウェールズラグビーは、ゲーム、プレーヤー、コーチ、オフィシャル、ボランティアのサポートにすべてのリソースを集中させることができるのです。

敬具

トニー・クロフォード   
NSWラグビー協会・会長

ポール・ドーン
NSWラグビー協会・最高経営責任者

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。

 

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NSW RUGBY SUPPORTS CENTRALISATION OF THE PROFESSIONAL GAME 


Dear NSW Waratahs Fans,

Lately you would have heard and read a lot about the concept of centralisation, an initiative from Rugby Australia to align the five Super Rugby Clubs in a collaborative way, to improve the standards and success of rugby at all levels of the game.

The recent poor performance of the Wallabies at the Rugby World Cup has focussed even more attention on the need for change and so we write now to advise you of where NSW Rugby stands on this issue.

NSW Rugby and Rugby Australia (RA) have been working in collaboration for many months to agree a new fully integrated model for the delivery of professional rugby.  This includes a new contracting model for players through to improving our pathways and player development programs.

Driving this initiative is the goal of delivering long term success for our men’s and women’s teams at Super Rugby level and to produce high quality players that can contribute to the success of our national sides. 

NSW Rugby is taking the lead in delivering this new model for Rugby in Australia. We are working with RA as part of the strategy to unite and act collectively to create a vision for the game and build a new structure that will deliver improved results both on and off the field. 

We believe that in the most contested sports market in the world, the current federated model for professional rugby is unsustainable and so the Board of NSWRU has endorsed the decision to advance the complete integration of the professional game across the country.

NSW Rugby is also dealing with a very real financial challenge. The increasing costs of professional rugby against diminishing returns from commercial activities, plus reduced funding from RA means that we’ve had to make clear decisions, focusing on what has to happen for the good of the game.  

A new Board will be created for the NSW Waratahs with directors appointed by RA and NSW Rugby, with this joint governance model supporting the co-ordination and cohesion of professional rugby in NSW. RA will fund 100% of the NSW Waratahs programs. 

This new model will maximise the benefits from co-ordinating high-performance programs and implementing strategies and initiatives to drive improved results for professional rugby both on and off the field. The new model recognises that the Waratahs knowledge, expertise and experience in our own local market, with members, sponsors, stadium, etc will be vital in working with RA in supporting the national program. 

We believe this reform is in the best interest of NSW Rugby, the NSW Waratahs and rugby in Australia.

And far from handing over the keys to RA as some suggest, we believe that the shared governance and high-performance model and NSW Rugby’s willingness to work collaboratively with all Unions will achieve the success that will drive the positive change in rugby that everyone is asking for.

The integrated approach still allows for local delivery and will maintain the proud history of NSW Rugby and the Waratahs which is critically important as we celebrate our 150th Anniversary in 2024. Assets such as the $20m high performance centre ‘NSW Rugby HQ’ which opened in 2022 and the NSW Waratahs trademarks and the intellectual property will remain under the ownership of NSW Rugby. 

NSW Rugby will continue to take full responsibility for the community game and for delivering programs to grow the game, to attract more participants, to improve pathways and create an environment for more people to become involved in rugby.

In prioritising the community game, NSW Rugby will be able to focus all of its resources into supporting the game, players, coaches, officials and volunteers. 

Yours sincerely

Tony Crawford   
Chairman, NSW Rugby

Paul Doorn
Chief Executive Officer, NSW Rugby

ラグビーワールドカップ 2027年オーストラリア大会での豪州代表の活躍を期待!  ジュニア・ラガーたちの成長を見守る

2023年のラグビーワールドカップで、過去2回の優勝経験のあるオーストラリア代表はプールステージで敗退し、非常に残念な結果となってしまった。世界のトップレベルで活躍してきたオーストラリアは世界ランキングで今や9位(2023年11月9日時点)と低迷。プライドの高かったオーストラリアのラグビー界とファンにとって今は屈辱的な感情を持たざるを得ないような状態だ。

しかも4年後には自国でワールドカップを開催することになっている。豪州ラグビーはこのまま低迷を続けるのか?それとも力強く復活して、4年後のワールドカップで優勝を狙えるまでに上昇できるのか。その成功のカギは、ジュニアからシニアに至るまでの国内でのラグビー振興と、若手プレイヤーの育成にある、と心の底から思う。

ラグビー豪州代表 World Rugby 公式ホームページより

(注:オーストラリアでは東海岸のニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州を中心に13人制のラグビーリーグが盛んである。ルールもかなり異なるほか、ファン層にもかなり大きな違いがある。このブログで述べるラグビーとは15人制のラグビーユニオンである。シーズン中の定期的なテレビ放映などを通じて商業的にはるかに成功しているラグビーリーグの方が、シドニーやブリスベンなど都市部では人気がずっと高く、ラグビーユニオンにとっては手強いライバル的な存在だ。)

 

オーストラリアのラグビーのジュニア(5歳〜18歳)はこれまで、南半球の春を迎える9月以降になるとオフシーズンだった。ラグビーをプレーするジュニアたちの間では冬はラグビー、夏はクリケットというオーストラリアならではの「伝統」があったからだ。特に中高一貫のハイスクールの私立系ではこの傾向が強い。ところがここ数年、7人制ラグビーが盛んになり始めたため、9月からもラグビーを続けるジュニアのプレイヤーが小学校でもハイスクールでも増えてきた。

 

主要都市のひとつ、シドニーでは「Sydney Junior Rugby Union」が運営する15人制の公式試合が4月末から8月末にかけて開かれているが、過去3年ほどは10月から7人制の公式試合が翌年3月にかけて実施されるようになり、今や「ラグビーは1年を通じてプレーするスポーツ」と徐々に言われるようになってきた。

 

女子ラグビーも盛んになっており、ジュニアの場合は7人制が年に3回の公式戦シーズンがあるほか、男子ラグビーと並行する形で、ジュニアでも10人制・15人制の女子ラグビーの公式戦が開催されるようになってきた。女子ラグビーが注目されてきた背景には、ラグビーのライバルであるラグビーリーグが女子のプロ・リーグ戦を開始して、テレビ放映もされて人気が出てきたことなどがある。このコード(*ルールに相違があるものの類似したプレー形態で行われるスポーツ)間の競争が、ラグビーそのものと女子スポーツの底上げにつながっている。

 

日本のトップリーグでもプレーする世界的なプレヤーを輩出してきたオーストラリアは、ラグビーに関しては非常にしっかりとした組織・運営体制をもっている。これは子供から大人までのプレーヤー育成システムに反映されており、ジュニアで優れたパフォーマンスをみせるプレーヤーをプロプレーヤーの高みまで引き上げていく選手選抜・護送システムががっしりと築かれているのだ。

 

下図はシドニーがあるニューサウスウェールズ(NSW)州のジュニアラグビーの組織運営図だ。シドニー地区のジュニアクラブのほかに、シドニー以外の地方区のクラブ組織、そしてハイスクール・小学校区の運営組織が含まれている。学校の運営組織に加盟しているのは、私立学校と公立学校の両方である。しかし実際は、ラグビースクールとも呼ばれる「伝統校」の多い私立学校が現状では圧倒的に優位にあり、プロプレーヤーの多くが私立系の組織から選抜される例が多い。

 

 

プロ級のトッププレイヤーを育成する選抜・護送のシステムは高校生レベルから本格化する。各地のラグビークラブや学校が選抜された選手たちが、プロのクラブチームの参加組織に編入されて、ハイレベルの訓練や実践を経験していくのである。

 

下記の名簿は、NSW州のラグビー統括団体でプロチームのワラターズが運営するエリートアカデミーに選抜された15歳以下の生徒たちの名簿である。

ラグビースクールとも呼ばれる私立の伝統校、St Joseph、Newinnton、St Ignatius、The Kings、The Scots などから選ばれた選手が多いものの、最近では公立校からも多く選ばれるようになったのが名簿から読み取れる。私立の伝統校はGPS(Great Public School)というラグビー対抗戦を実施しており、卒業生や一般のラグビーファンの間で人気が高い。日本の大学ラグビーの伝統校どうしの試合で見られる人気ぶりに似た盛り上がりをみせる。

 

ハイスクールを卒業後もラグビーを続けてプレーする場合は、いずれかのラグビークラブに所属してコルツ(18歳から22歳まで)という同世代グループチームの中か、上級グレードのチームに選ばれてプレーすることになるので、オーストラリアの場合、日本のような「大学ラグビー」が存在しない。大学の中にラグビークラブは存在するが、それぞれのクラブはラグビーの試合成績やレベルに応じて、ラグビー運営団体によって別々のリーグ戦やクラブ階層に振り分けられているのである。

 

したがって、大学名のついたラグビークラブであっても、所属メンバーにはその大学の学生もいるし、別の大学の学生もいる。さらに一般社会人からも加入が可能だ。例えば、シドニー大学のラグビークラブはトップクラスのプレミアリーグ(Shute Shield) に入っているので、ここから州代表や国代表となるプロ選手を輩出するセミプロだ。

 

ところが、大学の規模や知名度でシドニー大学と肩を並べるニューサウスウェールズ大学の場合は、シドニー地区のアマチュアクラブなどでつくるサバーバン・ラグビーユニオン(Suburban )の2部に位置している。つまり、この2つの著名大学のラグビークラブが同じ土俵で戦うことは無いのだ。日本ラグビーの早明戦や早慶戦など、スタジアムに大観客を集める大学ラグビーは、オーストラリアには存在しない。

 

高校ラグビーも同様で、東大阪の花園ラグビー場で毎年開催される全国規模の高校ラグビー大会のような大イベントは、オーストラリアには存在しない。

 

その代わり、トップレベルのスーパーラグビーから始まって、ハイレベルのクラブラグビー、地区クラブのアマチュアラグビー、スクールラグビー、ジュニアラグビーの試合が、シーズン中の週末にあちこちのラグビークラウンドで開かれる。

 

このように、オーストラリアのラグビー界は国代表クラスの選手とその所属組織を頂点するピラミッド型のヒエラルキーが厳然と体型的に構築されており、ジュニアからトップ選手までがプレーを楽しみ、そしてプレーヤーとして育成されている。こうした仕組みを通じて、ラグビー人口の裾野は、オーストラリアでは非常に広いと言えるであろう。

 

高校生、大学の年齢からプロチームの傘下組織に選抜され、ハイレベルのラグビーを身につけていく

このオーストラリアのラグビーを、ジュニアプレイヤーの育成活動を通じて縁の下からサポートしていきたいと考えている。ジュニアのラガーたちの成長をこのブログを通じて少しずつ紹介して、日豪のラグビーの間で小さな架け橋になれればと思う。願わくば、2027年のラグビーワールドカップの決勝トーナメントで豪州と日本が対戦して、両チームを応援するという「夢」が実現すればいいなと祈っている。

 

 

 

*筆者は日本のラグビー界とはほとんど縁がなく、高校時代と社会人時代にラグビーをちょっとかじった程度です。日本では3年未満の経歴しかなく、大学ラグビーとはまったく無縁です。ラグビーと深い関係ができたのは、シドニーに移住して会社員をやっていた30代の後半から。シドニーの地元のラグビークラブに入って、ほとんどいちからラグビーを始めました。この経験が人生の大転換点となりました。ポジションはプロップかフッカー。現在はシドニーのジュニア・ラグビークラブのコーチのほか、公式ラグビーレフェリー(写真中央)をシニアとジュニアの両方でやっています。